「んーん、なんでもない」
麗仁くんはわたしに甘えるように抱きしめる力を強め、後ろから首筋に顔を埋めた。
麗仁くんの柔らかい髪の毛が頬に当たって、ちょっぴりくすぐったい。
「ほんと?ま、かわいいからいいけど」
わたしは少し疑いの色をにじませて、そんな麗仁くんをからかうように言った。
すると、わたしの言葉を聞いた麗仁くんの体がぴくりと小さく動く。
麗仁くんが腕の力を緩め、わたしからそっと離れる。
わたしはそのことを不思議に思って麗仁くんを振り返ると、そこには頬を赤く染めた美青年がいた。
「え……、麗仁くん、大丈夫?」
わたしが顔を覗き込もうとすると、麗仁くんはそれを阻止するように自分の顔を手で覆い隠す。
わたしはさらに心配になって、麗仁くんに詰め寄った。
「っちょ、あやちゃん……」
いつもは涼し気な目が、今は驚いたように焦りを帯びている。その証拠に、麗仁くんの挙動が慌ただしくて新鮮だ。
なんだか、すごく………
「かわいい」
「……っ、はあーーー。待ってあやちゃん、まじでそれは、反則」
麗仁くんは完敗したと言わんばかりにため息をつき、真っ赤になった顔を隠すように俯いた。



