夜になると、麗仁くんは外へ出かける。
「麗仁くん、いってらっしゃい」
「行ってきます」
麗仁くんは柔らかく微笑んだ後、扉の向こうに姿を消した。
麗仁くんはこうやって毎日、わたしの家から仕事に出かける。
一人になったわたしは、麗仁くんが帰ってきた時にすぐに夜ご飯が食べられるように夕食作りを始める。
麗仁くんはコロッケが大好物だから、時間もたっぷりあるし揚げ物をしようと準備を始める。
コロッケを揚げ、同時にサラダも作って皿に盛り付けていると、ガチャリと扉が開く音がした。
「わ、いい匂いがする」
玄関の方から麗仁君の声がして、わたしはそちらを振り向く。
「麗仁くん!おかえりなさい。今日はいつもより早かったね」
「うん。仕事、少なかったしスムーズに進んだから」
麗仁くんが黒いスーツを脱ぎながら言う。
「そっか。あ、麗仁くんの大好きなコロッケ作ったんだ。一緒に食べよう」
「え、まじ?うれしい!」
麗仁くんはあどけない笑顔でそう言って、わたしの後ろをついてきた。
そして後ろからぎゅっとわたしを抱きしめた。
「ふふ、なあに?麗仁くん」
背中に麗仁くんの体温を感じて、わたしは胸がくすぐったくなるのを感じた。



