冷酷総長は、今日も変わらず彼女を溺愛する。【After Story】



「……くん」

「りと、……」


「──麗仁くん!!」

「っあ、ああ。どうしたの?」

「もうっ、どうしたのじゃないよ。さっきからずっと黙ったままだよ。気分悪かったりする……?」


おれより頭1つ分以上背の低いあやちゃんが、下から心配そうに見上げてくる。


あまりの可愛さに一瞬くらりとして危なかった。


「いや、そうじゃない。ただ、ほんの昔のことを思い出してて」


おれがそう言うと、あやちゃんは「そっか」と言って安堵した顔で微笑んだ。


いつもひっそりとした暗黒の夜の街が、今日だけはどこまでも提灯が連なり、燃えるような明かりの元人々の賑わう声が聞こえる。


普通ならあり得ないこと。

だけど、今日くらいならいいよね、とおれはこっそり隣を歩くあやちゃんを盗み見た。


「ねえ、あやちゃん。祭りに提灯を飾る意味、知ってる?」

「んー、知らないなあ」


悩む素振りを見せてから、あやちゃんが答える。


「実はね、おれも知らないんだー」


自分の口から、こんなしょうもない返事をする日が来るとは思ってもみなかった。