きっと、そんなことをするのは麗仁くんの前だけなんだろうな。
「……ん、もう2度と言わないで」
もし言ったらおれ、今度こそ泣いちゃうからね、とかわいく釘を差された。
わたしを抱きしめる麗仁くんの体温が温かい。
手は冷たいけれど、こうして生きていると思わせてくれる体温がどうしようもないほどに愛おしい。
ずっと守っていきたいと思う。
麗仁くんとわたしの、ささやかな幸せの未来を──。
多くは望まないから。
ずっと麗仁くんの側にいさせてほしい。
麗仁くんの隣で、笑っていられるわたしでいたいと願う。
旧校舎に繋がる渡り廊下、大きな窓からはたくさんの模擬店が見える。生徒が下を行き交う中、わたしと麗仁くんは秘密の時間を過ごす。
見つめ合って、キスをして、抱きしめ合う。
もうそれだけで、涙が出そうになるくらい。
麗仁くんと過ごせるひと時が、わたしにとって宝物のような時間に感じる。



