「飛鳥馬様がお気に召したものを、特注で最上級の職人に繕わせたものでございます」
黒のスーツに身を包んだ麗仁くんの部下の方に言われた日本語を理解するまでに数秒を要した。
わたしは情けないくらいポカーンと口を半開きにさせ、驚きを隠せなかった。
この数々の豪奢な着物に掛けられた金額を想像すると目眩を起こしそうだ。
「そんな、わざわざ……」
「飛鳥馬様は七瀬様にぜひ着てもらいたいとおっしゃっておりましたよ」
恐怖で戦慄くわたしを前に、なんだか怖い笑みを浮かべて無言で「いいから選べ」と圧をかけてくる。
何この人怖い……っ!
「え、えーと、じゃああちらを……」
わたしは恐る恐る一着の着物に指を差した。
その先にあるのは、薄紫基調の布に咲き乱れる菖蒲の花がきらびやかに刺繍されたもの。
帯は白に金の糸で複雑な模様が描かれた上品なもので、一目で目を惹かれた。
「かしこまりました。それでは、こちらに」
スイートルーム内にある更衣室に促され、わたしは女性のお手伝いさんとともに中へ入った。
それからは着付けに化粧にヘアアレンジまでしてもらい、姿見の前に立ち、自分の姿を確認する。
そこには、どこかの国のお姫様にでもなったのかと目を疑うほどに、まるで別人のわたしが写っていた。



