けれど、飛鳥馬様は俺から視線を逸らし、続けて質問を重ねることはなかった。
それが逆に恐ろしさを増幅させ、俺は久しぶりに背筋がピンと凍ったのだった。
すみません、七瀬様。
サプライズ準備早々、勘付かれてしまったようです。
𓆸 𓆸
「あやちゃん」
自宅の台所で今日の夜ご飯のハンバーグに添えるきゅうりの漬物を作っていた時。
リビングで仕事をしていた麗仁くんがいつの間にかわたしの後ろに来て、腰に手を回してきた。
「どうしたの? 麗仁くん」
わたしは切り終えたきゅうりをジップロックに入れ、続けて塩砂糖とわさびを加える。
麗仁くんは振り返りもせず声だけで訊ねるわたしを不満に思ったのか、さらに抱きしめる力を強める。
「おれに何か隠してることあるでしょ」
ワントーン低くなった声に、わたしは動かしていた手をとめる。
冷たく刺すような視線を背後から感じる。
───麗仁くんは今、とてつもなく機嫌が悪い。
「あやちゃん、おれが知らないうちに、誰かと会ったの? ねえ、誰と会ったか教えて? 別に怒らないから」
わたしの体を自分の方に向かせ、間近に光る麗仁くんの瞳孔は開ききっていて、なんだか怖い。



