でも、そのことを明かすわけにはいかない。
なぜなら、七瀬様と準備を進めている飛鳥馬様への誕生日サプライズを知られてしまうのはまずいからだ。
なんとかこの危機を乗り越えなければ。
飛鳥馬様は真相を究明しようと依然として俺を鋭く睨みつけている。
俺は無表情を保ちながら、己の失態に心の中で舌打ちする。
七瀬様とお会いした日に着用したスーツを洗わないまま今日も身に着けてしまっていた。
いつもだったら、必ず消臭スプレーを吹きかけるか、クリーニングに出したりしていたのに。
東ノ街の皇帝の側近を務める身として、いついかなる時も誰かの匂いや行く先々で出会う女の口紅や白粉などの痕跡を残さないよう、心がけているつもりだった。
とんだ失態だ───俺は心の中で深くため息を吐いた。
「ふーん」
昏く地を這うような闇を含んだ冷徹な声が、書斎の一角に影を落とす。
飛鳥馬様は、俺の言葉を信じていない。
すぐに分かった。
飛鳥馬様を騙すなど、この街の下では不可能に近いのだ。



