〜絃side〜

目が覚めると隣には小さな灯りと人影。曇った視界のせいで誰なのか分からない。

なに、してるの、?

聞きたいけど、眠くて口が開かない。


「絃ちゃん、起こしちゃった?」

手握れる?と毛布の中の左手に触れる。


キュッ、

「うん、ありがとう。まだ夜中だから寝ときな」



その人もまた頭を撫でて、灯りを消して部屋を出ていった。



翌朝の回診、夜星先生の丁寧なノックで目が覚めた。


「絃ちゃんおはよう」

「夜星、せんせ、おはようございます」



ひと通りの診察と術部の消毒をして、少しだけのお話タイム。




「やっとまともに診察させてくれたね」

ふはっ、と困ったように笑う夜星先生に少し恥ずかしくなる。


「昨日の夜、赤城先生、悠くんのお父さんが来たでしょ?」


「あ、お父さんだったんだ。誰かわからなくて」


「まあ術後で眠かっただろうしね。もう大丈夫そうだねって喜んでたよ。で、今日一日経過に異常がなかったら明日退院できるんだけど、どうしたい?」


「どう、したい、、と言いますと?」



「悠くんはまだ家に帰れない。律先生はしばらくここの小児科で勤務する。今帰っても一人なんだ。
俺は傍で見ているのが絃ちゃんにとっても一番安全なことだと思ってる。
でも、約束は約束だし、退院してもいい。ただ、その場合は毎日朝か夜に律先生の診察を受けること。」


あ、それだけなの?てっきり話の流れで退院延期になると思ってた。
律先生の診察を受けるだけなら、ね。

「家、帰ります」


「わかった。じゃあ今日はちゃんと安静にね」


「はい!」



私が返事をすると夜星先生は頷いて、病室を出て行った。

お昼すぎには瑛杜先生と夏くんが部屋に来てくれたり、椎名先生も少しだけ様子を見に来たり。


今日は一日静かに過ごし、ご飯もちゃんと食べた。

約三週間、長かったな。


鶴川先生にはたくさん迷惑かけちゃったし。まさか夜星先生に治療されるとは思ってもなかった。

広持先生もいたし、律先生も途中からいた。


思い返せばこんなにたくさんの先生たちが治療してくれてたんだ。
こんなにお医者さんがいるんなら、お兄ちゃんたちの一人くらいいてくれてもいいのにね。


頭の片隅にあるお兄ちゃんたちとの記憶を追いかけながら眠りについた。