悠久の絃 2

「律先生、今日は黒色だからかな?いつもは悠みたいに優しいですもんね。」


「そーだよね!なんなら悠より優しいし。」


ん……それは分からないけど。




「あ、で、樹に追い出されたのもそうなんだけど、絃ちゃんに明日の手術の説明をしに来たの。」



―明日の手術はお昼すぎからやるよ。全身麻酔ではないけど眠ったままやるから怖がらなくていい。術前の検査でやることは絃ちゃんも何回かやったことあるからいつも通りでね。
で、手術は足から心臓にカテーテルっていう管を入れて、さっきエコーで確認したところを焼くの。焼くって言っても心臓を治すためにやるから怖がらないで。




「おっけー?」



「……はい。でも、夜星先生がやるんじゃないんですか?」



「そうだったんだけど、俺がやることになった。でも樹も助手で入るから。
病院の決まりで術前説明するのは執刀医って決まってるんだ。で、樹から俺に変わったから俺が今来た。」



「律先生が、、そっか。」

「悠はしばらく会えないかも」



「………え?」



「今、悠は?って聞こうとしたでしょ。ごめんね、悠にはしばらく会えないと思う。」





なんでですかって聞いてもはぐらかされて、律先生に「今日はよく寝た方がいいから」って半強制的に会話を終わらせられた。


なんでよ……



「そんなにふくれっ面しないでよ。ちゃんと予定通りに退院させてあげるからさ。」


たしかに手術が終わったら退院とは言ってたけどさ……そういう問題じゃないのに。



「ほら、横になって。ちゃんと寝るんだよ〜」



おやすみって部屋を出ていった律先生の背中が見えなくなると、一気に眠気が襲ってきた。


悠……なんで会えないの…



ふわっと眠気にさらわれて、意識は完全に落ちていた。