街はクリスマスムード一色の十二月初旬、私はふと卓上カレンダーを見て、明日が自分の二十五歳の誕生日だということを思い出した。

 今年の春に結婚して、初めて旦那様と過ごす誕生日だ。と言っても、一緒になにかするわけではないけれど。

 きっと彼は明日も仕事だろう。自分の誕生日を教えたことはないし、年末の忙しい時期なのはわかっているから、いつもの日常となんら変わりないはず。

 でも、ケーキぐらい買おうかな。なにもしないのでは、さすがに自分が惨めになってくる。……いや、こんな風に考えている時点で惨めか。

 内心苦笑してお皿に盛りつけたおかずにラップをかけようとした時、玄関のドアが開く音がした。

 今日は珍しく早いお帰りだ。一緒に夕飯が食べられるだけで嬉しくなり、笑顔で旦那様を迎える。

「ただいま」
「おかえりなさい。ちょうど夕飯が出来たところですよ」

 慧さんはコートを脱ぎながら料理が並んだテーブルに目をやり、「ありがとう」とわずかに微笑んだ。

 彼は、基本的な挨拶はきちんとする人。家政婦みたいだと自分でも思ってしまうくらいの生活だけれど、こういうひと言をくれるから続けていられるのだろう。