黒峰くん、独占禁止。

 私がそう頷いたのを確認した嶺緒君は、手を差し伸べて立たせてくれた。

「家まで送るから、離さないでね。」

 痛っ……と一瞬感じてしまった手は。

 離すもんか、と言わんばかりに強く握られていた。



「……絆創膏、貼っとこう。」

 お風呂に入っている時に気付いたキスマークや歯形を見て、少し顔が強張る。

 嶺緒君、日に日に束縛が激しくなってる気がする……。

 それを咎めるほどの力なんて私には持ち合わせていないから、その事も含めてため息が零れた。

 過去の私なら、喜べてたのかな。

 黒峰君と出会わなければ、あのまま嶺緒君にめちゃくちゃにされてもいいって思えたのかな……。

 大きめの絆創膏を貼り付けつつ、ぼんやり考える。

 いくら過去を悔やんだって、変わるはずもない現実に嫌気がさした。

 やめようって思うのに、そう思えば思うほど思考は肥大していく。

 ……黒峰君は、いつも私のことを気にかけてくれている。

 もちろん目を瞑っても瞑り切れないほどのしつこさや、鬱陶しいくらいの恋愛感情を感じるけれど。