黒峰くん、独占禁止。

 ……嘘、でしょ。

「ねおくっ……んんっ、いやっ……!」

 離して、やめて。

 そんな嫌悪の気持ちばかりが膨れ上がって、さっきよりも懸命になって拒否する。

 けど嶺緒君はそれ自体を許さないように、何度も何度も唇を重ねた。

 呼吸が乱れて、段々と意識が飛んでいきそうになる。

 それでも、ここで気を失ったら嶺緒君に何をされるか分からない。

 その一心で、何とか意識を繋ぎとめていた。

「……これで分かった? ももちゃん?」

「っ…………う、うん。」

「そうだよね? そうじゃなかったら俺、もっと激しーのしてたよ。」

 ずるずるとその場に座り込んだ私に、いつもの柔らかい眼差しで見つめてくる嶺緒君。

 ちょうど差し込んできた月光で、嶺緒君のその表情が見えた。

 恍惚としていて、愛おしそうで、狂気的な微笑み。

 ぞわっと背筋が凍るほど、深い意味を持たせる笑みでもあった。

「ふふ、今度また黒峰に縋るんだったら……次は唇だけじゃ済まさねーよ?」

「……は、い。」

 嶺緒君の言葉の意味は、流石の私でも分かる。