黒峰くん、独占禁止。

 ……――怖い。

 今まで嶺緒君を怖いと思った事なんてなかったのに、今途轍もなく……嶺緒君が恐ろしい。

 嶺緒君はこんな乱暴な人じゃない。もっと優しい人なのに。

 そんな気持ちが、刷り込みされたものだったんだと今更ながらに気付く。

 かといって、私は嶺緒君を突き放せない。物理的にも、精神的にも。

「ねおくん……こんなの、やめ……よう?」

「どうして。」

「だって、いつもの嶺緒君じゃない、もん。」

 きっと夜だから、深夜テンションみたいなやつになってるんだよ。

 そう伝えたくて小首を傾げながら、ねっ?と言ってみる。

 ……だけどもそれだけで止まってくれるほど、今日の嶺緒君は優しくなかった。

「桃香がいつも思ってる“優しい俺”が、ほんとだって言いたいの? んなわけねーのに、どこまで頭お花畑なの?」

「ひぁっ……――んんっ!」

 ぞわりと、お腹に嶺緒君の冷たい手が当たったと同時に。

 誇張なしで、息を吐く暇を与えられないまま唇が塞がれた。

 真っ暗だった視界が、更に真っ暗になってもう何も分からない。