黒峰くん、独占禁止。

 強い語気の嶺緒君に、うっと言葉が詰まった。

 暗くてよく見えないけど、きっと怒ってる。

 ……私が怒らせてしまっている。

「ごめん、なさい。」

「桃香が生きられてるのは俺のおかげだって、ちゃんと分かってる? 桃香が俺の機嫌損ねれば、すぐにでも契約解除できるんだよ?」

「わかって、る……。」

 すくんできた足を奮い立たせながら、必死に言葉を紡ぐ。

 心臓の音がうるさい。下手したら嶺緒君に聞こえちゃいそうだ。

「……ごめん、ね。」

「何が。」

「黒峰君と、もう少しいたい……だなんて、言って。」

「はっ、分かってんじゃん。分かってやってたとか、相当タチわりーな。」

 笑い飛ばすように浅く言葉にした嶺緒君。

 それが聞こえた途端、真っ先に額にキスが落とされた。

 暗闇だからか、やけに感じ方がダイレクトで変な声が無意識に零れ出る。

「ん……ふ、ぅ……っ。」

「何? 軽いやつだけでここまで感じんの?」

「そ、いう、わけじゃ……っ、ひぁっ……」

「いや、そーゆーわけだろ? 元々桃香感じやすいんだし、すぐに腰抜けそーだね。」