「……ねぇ、どうしてあの場にいたの?」

 黒峰君から結構な距離を取った場所で、立ち止まって尋ねる。

 外はすっかり暗くなっていて、ぼんやり光っている街灯が頼りだ。

 暗いところは得意じゃないけど、聞くなら今しかない。

 どうしてよりによって、今日ばったり会ってしまったのか。

 意図的なのか、偶然なのか。

 繋いでいた手を離すと、嶺緒君は笑顔のまま眉の端だけを下げた。

「どうしたのももちゃん。もう暗いから、送ってってあげるのに。」

「質問に答えて。いつもは放課後会わないのに、何で今日は……」

「ん~? 偶然だよ。ちょうどももちゃんの姿が見えたから声かけただけ~。」

「……それだけなら、どうして私を――」

「ももちゃんに会ったらどうしても、ももちゃんにくっついていたいからね。」

 ……嶺緒君にとっては、そうなんだ。

 私を置いておきたい、一緒にいてほしい存在であるんだ。

 嶺緒君は、私を想ってくれているんだ。

 そうだよね、そうじゃなきゃ助けたままにしてくれてないよね。