黒峰くん、独占禁止。

 嫌いってわけじゃ、ないけど……。

「どーしてそんな冷たい事言うの? ももちゃん、俺悲しいよ?」

「おい、お前……こいつに何した?」

 ぎゅ、っと私を引き寄せた黒峰君。

 嶺緒君に凄みを効かせながら、そして優しい手つきで私の背中を撫でてくれる。

 ……あぁ、やっぱりそうなのかなぁ。

 私、ずっと嶺緒君のこと好きなんだって思ってた。思うようにしてた。

 でも、そうじゃないみたい。

 私は、黒峰君のこと――……。

「ももちゃん、俺との約束破るの?」

 ……静寂に、悲しそうな嶺緒君の声が木霊する。

 っ……それ、は。

『俺から離れたら、ももちゃんのこと知らないよ? そうなったら俺、もう助けられないよ?』

 ここに来てまで、嶺緒君は私を縛ってくる。

 強くて頑丈で、どんな鋭利な刃物を以てしても破れない紐のように。

 嫌なのに、そんなの嫌なのに。

 ……断れ、ない。

「ね、ももちゃん。俺と帰ろ?」

 口角を上げた嶺緒君が、こっちに手を伸ばしてくる。

「散々春宮怯えさせといて、お前何言って――」