黒峰くん、独占禁止。

 幼い頃からガチャガチャが好きな私は、今でも時々ガチャガチャをしている。

 特に食品を模したものが好きすぎて、家にはいくつもの食品ミニチュアが置いてあるのだ。

 ふふっ、どんな種類があるのかな~……。

 わくわくせずにはいられない。

 隣からやけに熱っぽい視線を感じるけど、そんなの気にしない気にしない。

 だって私の頭の中は、もうガチャガチャでいっぱいだもん。

「……――ももちゃん。」

 それなのに、目の前から聞こえた……悪魔みたいな声。

 ……な、何で。

 何で、どうして、ここに……。

「ね、お……くん?」

「うん。どーしたのももちゃん、そんな怯えちゃって~。」

 いつものにこにこ笑顔で歩を近付けてくる、突然目の前に現れた嶺緒君。

 こんな、下校中にばったり会うだなんて今までなかったのに……。

 ……いや、だ。

「こ、こっち……来ないでっ……。」

 震えた声が、無意識に口から零れた。

 威勢がなくて、蛇に睨まれた蛙みたいに怯える私。

 嶺緒君のことが嫌いってわけじゃない。