黒峰くん、独占禁止。

「ううん、そんなの気にしないでっ。このクレープ美味しいし、抹茶のはまた食べに行くよ。」

「そうか。」

 ふっと、緩く頬を綻ばせた黒峰君。

 ……ドキッ、なんて。

 心臓が、変に甘い音を立てる。

 痛いのに、それが心地よくてずっと続いてほしくて。

 ダメだって、分かってるのに。

「春宮、ちょっと動くなよ。」

「へ? ……――!?」

「ん、ごちそーさま。」

 唇の端っこにクリームが付いていたようで、おもむろに黒峰君の顔が近付く。

 反射的に目を瞑ると、瞬間小さくちゅっと音が響いた。

 そして目を開けると……ニヤリと不敵に微笑む黒峰君が映る。

 ……ズキッと、胸が鈍く痛む。

 私はどうして、嶺緒君のものなの?

 私はどうして、嶺緒君の拾われ子なんだっけ……?

 決して忘れた事はないのに、今だけは疑問に思ってしまった。

 私が嶺緒君のものじゃなければ、嶺緒君の拾われ子じゃなければ。

 ……私が、圓光寺財閥に行かなければ。

 そんなたらればばかりが浮かぶも、首を左右に振ってすぐに払拭する。