黒峰くん、独占禁止。

「……そりゃ、もちろん……」

　そこまで言いかけて、言葉が止まる。

　もちろん……って、あれっ。確かによく考えたら、他に何もないかもしれないっ……！

　でもここで、やっぱりありませんだなんて……言ったら負けな気がする。

　どこで張り合ってんだかって思われそうだけど、そう考えてしまっては反論する他ない。

「もちろん、もちろん……もち……うぅっ……」

　や、やっぱり何にも思いつかないっ……。

　必死に考えて絞り出そうとしてみても、余計に混乱してくるだけ。

　それを聞いた彼は電話越しに、はーっと息を吐いた。

《春宮の教室今向かってるから、そん時愛でさせてくれね？　お前可愛すぎてどーにかなるわ。》

「……嘘は大概にしてよ、黒峰君。」

《嘘だと思うか？》

「思うから、言ってるんだよ。」

　簡単にそーゆー事、言っちゃダメなんだよって教えたい。

　いつか悪い人に良いように使われちゃいそうな彼に、そんな心配が募る。

　私が言ったところで、どうにもならない事は百も承知だけど……っ。