その夜は、まっっったく眠れなかった。

 そりゃそうだ。古夜君があんな意味深な事言うんだもん、気になって仕方ない。

『お前、嶺緒の拾われ子だろ。』

『俺も、あんたと一緒であいつの拾われ子だから分かるけど……嶺緒を好きになんなよ。』

 制服のボタンをペチペチと留めている最中も、ずっとその事について考えていた。

 意味が分からなかったから、考えて眠れなかったんじゃない。

 ……意味が分かりすぎていたから、眠れなかったんだ。

 嶺緒君の拾われ子。あんな言葉がすっと出てくるだなんて、ましてやあんなにサラッと言うだなんて……どう考えても、“一緒”だとしか考えられない。

 古夜君も私と一緒で、嶺緒君の拾われ子。

 古夜君も、私と似たような境遇を辿ってきたんだろうか……。

 一瞬だけ聞いてみようかと思ったけど、きっと野暮だ。

 しかも聞かれたくない事だろうし、ここは黙っておくのが吉。

 ……それでもやっぱり、気になるものは気になるけど。

「光莉ちゃん、大丈夫だったかな……?」