黒峰くん、独占禁止。

「……っ!?」

「ほらな、言ったとーりだろ。」

 ふっと微笑んだ黒峰君は、そう言いながら私に視線を移すと。

「さっさと逃げるぞ、こっから。」

「え、ちょ……っ、まっ……!」

 途切れ途切れの言葉を聞かないまま、私の手を取って踵を返す黒峰君。

 もう喧嘩はする気はないようで、完全に逃げの体制だ。

 ま、また黒峰君のペースに飲まれちゃう……!

 直感でそう気付いた私は、起き上がりかけている人のことが気になるけど、手を振りほどこうとした。

 ……けど!

「とりあえずあっちまで行きゃいいか。行くぞ、春宮。」

「だ、だから待って……っ!」

「ここで待ってたら危険な目に遭うだろーが。」

 そ、それはそうだけど……!

 黒峰君といるほうがよっぽど危険だよ!

 心の片隅でそんな思いを連ねながら、今度こそほどこうと腕を振るも。

「落とし前つけろやぁ……黒峰ぇぇぇっっっ!!!」

「ひぃっ……!」

「だから言ってんのに、あぶねーって。」

 突然背後から聞こえた声に完全に驚いてしまい、その反射で黒峰君の腕に抱き着いてしまった。