黒峰くん、独占禁止。

《み、て、て》

 恐らくそう言っているんだろう。

 ふふんっと笑う嶺緒君は口パクで伝えてくると、授業でやっていたらしいサッカーの試合に戻り。

「……相変わらず凄いねっ、圓光寺君!」

 光莉ちゃんが声をあげたと同時に、はっと我に返った私。

 急いで嶺緒君を見るとどうやら何本かシュートを決めたようで、グラウンドにいた男子たちが騒いでいた。

 嶺緒君はというと……満面の笑みで私のほうを見てくる。

 ドヤ顔なのかよく分からない顔で見てくる彼を、純粋に褒めたい。

 その気持ちは、間違っていないはずだ。

 私の好きな人は、圓光寺嶺緒君。嶺緒君なんだ。嶺緒君のはずなんだ。

 凄いねって、どうやってやったのって、サラッとそんな言葉が出てくるはずなのに。

「……? おーい、桃香ちゃーん?」

「っ……ど、どうしたの?」

「なんだかぼーっとしてるように見えたから……。大丈夫?」

「だ、大丈夫大丈夫! あはは……。」

 ダメだ、ダメだって。

 頭では分かってるはずなのに。

 ……どうして、こうも心がモヤモヤするの。