黒峰くん、独占禁止。

 どうしようもできないなぁ……。

 スクールバッグのボタンを留めて、一度深呼吸をする。

「ももちゃん。」

「っ……!」

 その時だった、聞き慣れた声が私に届いたのは。

 優しいのに、含みがあって闇があって……凄く、未知な声。

 急いで声のしたほうに視線を向けると案の定、にこにこ笑顔の嶺緒君がそこに佇んでいた。

 丸く穏やかな瞳の中に、声と同じ闇が見える。

 だから一瞬声が出なかったけど、すぐに気をしっかり持って言葉を投げた。

「ね、嶺緒君? どうしてここに……?」

 いつもならもう、帰ってるはずだ。

 クラスも違うし、なんならここは昇降口とは真逆。

 それなのにわざわざ、ここに来るって事は……。

「そんなの、分かるでしょ?」

「――っ、わっ……!?」

「ももちゃんに会いに来たんだよ。」

 ぎゅっと、力強く抱きしめられる。

 いつもこうだ、嶺緒君と会った時は大抵こうして抱きしめられる。

 抵抗なんて、私の分際でできない。

 嶺緒君には逆らえない、逆らっちゃダメ。私は嶺緒君の言う通りにしなきゃ。