胸板を叩いても、なかなかやめてくれそうにない。

 それどころか、もっと深くなってるような気が……っ。

「や、やっぱり溺愛禁止……っ!」

「だから無理な願いだって言ってるだろ。」

 ついには手まで封じられてしまって、気付けば恋人繋ぎにされていた。

 乱れる呼吸の中、視界に入る黒峰君の瞳は何よりも鋭くて甘くって。

 逸らす事も許されなさそうで、段々と抵抗できなくなっていった。

「ほんと可愛い。桃香だけだわ、俺の理性なくなんの。」

「……っ、そ、う。」

 甘い囁きの中に、名前を呼ばれる。

 ……もっとして。そうやって思う私は、きっともう手遅れだ。

 頭の中に少しだけ残ってる理性で、そう感じた。

【FIN】