もうテンプレになってしまっているハグに、私は戸惑う事をしなかった。慣れてしまったから。

「他の男のことは考えんな、分かったか?」

「……でも」

「でもじゃない。……春宮だって、俺が他の女のこと考えてたら嫌だろ?」

「……うん、確かに。」

 抱きしめる腕に力がこもる。

 離したくないと意志が感じられて、私は控えめに呟いた。

「黒峰君、めちゃくちゃ愛重たいね。こっちが恥ずかしくなっちゃうよ。」

「そうか? 俺はそんな思わないが。」

「……溺愛禁止って言ったら、どうする?」

 試すような口調で、ニヤリと笑ってみせる。

 黒峰君は愛が重たい。それは一瞬見ただけでも分かるほど。

 前に“独占禁止”と言ったように、今度は“溺愛禁止”と言ってみる。

 その反応を待つ為に、黒峰君の顔を見ようとした瞬間だった。

「ん……んんっ!? ちょ、ちょっと……っ、んぅっ……。」

「俺が守れるわけないだろ、そんなの。」

 今度は黒峰君がニヤリとして、思ったよりも深いキスが落とされる。