黒峰くん、独占禁止。

 そんな事を考えて、内心ふふっと微笑む。

 けれど黒峰君はいたって真剣で、まっすぐに私を見据えた。

「そのはずだったのに……真冬は、もう一度だけでいいから会いたいと連絡してきたんだ。言い訳がましく聞こえるかもしれないが、一日真冬の言う事を聞けば、仕事に集中できる……関係をバッサリ切れる、そう言われたから。」

 だからあの時、一緒にいた……というわけか。

 キスも、真冬さんの言う事だったから逆らえなかっただけ。

 黒峰君は真冬さんとのキスを、愛だと思っていない。

 真冬さんには失礼だけど……私はその言葉で、凄く安心できた。

 きっと真冬さんは、本気でヨリを戻したがっている。黒峰君の繊細な優しさに気付いてないまま。

 そんな人に黒峰君を……やっぱり譲りたくない。

 ……じゃあ、もしかして。

「わ、私のこと好きだって言ったの……嘘じゃ、ない?」

 自分を指さし、少し慌てながら尋ねてみる。

 そうすると黒峰君は一瞬きょとんとした後、ふっと頬を綻ばせた。

「当たり前だろ。春宮のことがこの世で何よりも好きだ。誰よりも愛しているんだ。嘘だと思うか?」