黒峰くん、独占禁止。

「怪我はないか?」

「お、お陰様で……。」

「あの男に何もされていないか?」

「されて、ないよ? 全然大丈夫。」

 あははと乾いた笑みではにかむと、黒峰君は安心したように息を吐いた。

 その様子はとても嘘とは思えず、抱きしめられている私は言葉に詰まってしまう。

 こんなしおらしい黒峰君を、疑うような真似はあまりしたくない。

 けれどはっきりさせなきゃ、また同じような迷惑をかけてしまうかもしれない。

 色んな感情が混ざっている中でも、私はゆっくり黒峰君を引き離した。

「……どうして、来てくれたの?」

「春宮が連絡をくれたからだと言っただろ? 応答しても物音しかしなかったから、おかしいと思って飛び出してきたんだ。しかもビデオ通話で空と周りしか映っていなかったから……怪しんだ。」

「私の為に、来てくれた……って思ってもいいの?」

「逆にそれ以外に何があるって言うんだ。」

 ごく普通に、それが当たり前だと言わんばかりの黒峰君。

 でも私にとっては当たり前なんかじゃなくて、来てくれるだけで嬉しいものだった。