黒峰くん、独占禁止。

 ……そう言われたら、何も言い返せない。

 嶺緒君は分かってたんだ。分かってたからこそ、引き止めたかったんだ。私を好きでいてくれたから。

 ふっ、と嘲笑に似た何かが嶺緒君の唇から洩れる。

「だけどー、もう俺が何してもももちゃんは黒峰のとこに行きたいんでしょ? ならもう、引き止めるだけ無駄骨かなぁって。」

 あっけらかんとした言い方なのに、どこか苦しそうに聞こえた。

 私は、嶺緒君に酷い仕打ちをした。嶺緒君を好きになれたら、どんなに良かったか。

 そう言ったって、この気持ちはコントロールできそうにないんだけど。

「……ももちゃん、今まで契約で縛っててごめんね? ももちゃんに離れてほしくなくって、つい強引な手段も取っちゃったね。」

「そ、だね。」

「まぁでも、これは覚えといてほしいかな。」

 私の前髪をかきあげ、ぺいっとデコピンしてきた嶺緒君。

 そんな彼の表情は、哀しくも諦めているようにも見え、その反面清々しいものにも見えた。

「俺がももちゃんを、この世でいっちばん愛してるって事。」



 翌日、私は朝早くに荷物を纏めて嶺緒君のお家を出た。