黒峰くん、独占禁止。

 そりゃあそうだ。まさかそんなものが見返りだとは思わず、すぐに返答できなかった。

 ……けど、もしこれを断ったら。

 そう、嫌な可能性が頭に際限なく流れ込んできたんだ。

 また借金まみれの生活に戻るかもしれない、下手すればもっと酷い状況になるかもしれない。

 想像もできないような多額の借金を一括で、しかも即決で肩代わりしてくれた嶺緒君。

 その事から嶺緒君がすっごくお金持ちなのは予想がついていて、だからこそ怖かった。

 お金持ちなら、それなりに権力はあるはず。その権力を振りかざせば、私たち家族はすぐにでも……。

 そんな、最悪な未来が容易に考えられた。

 お父さんとお母さんは必死に別の見返りをお願いしてくれていたし、杏珠も落ち着いてられないくらい泣いていた。

 私も、泣きたかった。でもできるはずがなかった。

 私が拒否すれば、どうなるか分かったものじゃない。最悪な未来が現実になってしまう。

 それだけは何が何でも阻止したかった。せっかく家族を助けられたのに、また戻ってしまうなんて嫌だった。