黒峰君が、私を好き?

 いやいや、そんなわけ……。

「黒峰君、引っ叩いていい?」

「思いっきりどーぞ。」

「……それは、しないけど。」

 夢、なんだろうか。

 そう思い、とりあえず半分くらいの力を入れて黒峰君のほっぺたを叩く。

 もちろん、そのほっぺたは赤く染まっていった。

 ……夢じゃ、ないんだろうか。

 さっき叩いた時、確かにほっぺたの感触があった。

 私の手もヒリヒリしているから、夢じゃないんだろうと分かってしまう。

 それにしても、この人は……。

「叩かれてニヤニヤしないで、ほしいな。ちょっと……引く。」

「その視線も良い。貶すなら思いっきり貶してくれ。」

「……いや、ええっと」

 ごめん、正直に言う。

 ――黒峰君、ちょっと気持ち悪いかも。

 普通、叩かれて嬉しそうにする人なんていないよ。ましてや、もっと貶せだなんて。

 黒峰君はもしかしたら、俗に言うマゾヒストってやつなのかもしれない。

 そうだったら、ちょっと……ううん、結構めんどくさいかも。