黒峰くん、独占禁止。

《……もう来たのか。》

 はぇ……っ?

 インターフォンが勢いよくブチッと切れる前、聞き覚えがあるような声が聞こえた。

 あの声、ってもしかして……。

「ももちゃん?」

 うーんと考え込んでしまいそうになった時、くいっと腕を引っ張られる。

 おかげで我に返った私は急いで愛想笑いを貼り付けた。

「ううん、何でも。」

「そ? ……それならいいんだけどね。」

 何か意味を持たせそうな含みのある言い方をする嶺緒君に、後ろめたい事はないはずなのに背中全体が震えた。

 ……どうしよう、嶺緒君に怯えてばっかだ。

 黒峰君といる時は怯えるなんて事しなかったのに……どうして、嶺緒君にはしちゃうの。

 好きになろうって決めてるじゃん、しっかりしなきゃ私。

 空いているほうの手でペチッと自分の頬を叩き、静かに喝を入れる。

 嶺緒君はそれには一切気付かず、ルンルンした様子で玄関扉を開けた。

「ただいま~。」

「……おかえりなさいませ、嶺緒様。」

 え?

「え、え……ふ、ふるや、くん?」