黒峰くん、独占禁止。

『私は、嶺緒君のものだよ。』

 その言葉で、彼は……私を助けてくれた人は、笑ってくれる。

 私に優しくしてくれる、抱きしめてくれる。

 私が黒峰君に距離を置こうと言ったのは、この事もある。

 むしろ、この事が一番大きいかもしれない。

 私と嶺緒君は、歪な関係。

 だからこそ、ちょっとの事で壊れてしまう。

 それだけは、避けなくちゃいけない。

 私は……圓光寺嶺緒(えんこうじねお)君を、裏切れないもの。



 プルルルッ、と着信音が聞こえたのは教室に戻る前だった。

 もし嶺緒君だったら、早急に出なきゃいけない。

 でも黒峰君だったら……どんな言葉を言われても、何を返せばいいのか分からないから極力出たくない。

 その為に確認すれば、液晶に移されていたのは《黒峰君》という文字で。

「……ごめんね、黒峰君。」

 否応なしに、私は拒否のボタンを押した。

 まぁ、それだけで彼が止まるはずもなく。

《春宮、今日も頑張ろーな。》

 ピコン、と音がして見てみればそんなメッセージが来ていた。