その後、教室に戻る気力が残っていなかった私は屋上でサボってしまった。

 だから怒られると覚悟していたんだけど、先生から出たのは心配で。

『何か悩みがあるなら言えよ? 相談乗ってやるから。』

 ゴリゴリの体育会系の数学教師に、そう言われてしまった。

 見た目怖いけど、生徒を大事にしてくれてるから人気が高いんだよなぁ……。

 ほとんど上の空でぼーっとしていると、シャっとカーテンが開かれる音がした。

「春宮さん、先生少し席を外すけど……もし教室に戻りたくなったら戻っていいからね。もし何かあったら職員室に来てね。」

「……ありがとうございます。」

 今私がいるのは、保健室の奥にあるベッドの上。

 少し考えてみたんだけど、教室に戻るのはしんどかったから休ませてもらっている。

 滅多に保健室に来ない、健康優良児の私がここに来たから先生を驚かせてしまった。

 『体調が悪いわけじゃない、教室にいたくない。』

 正直に先生に伝えると、快くベッドを貸してくれた。

 パタンと優しい力で閉ざされた扉の音がなくなると、逆に音が聞こえてきそうな静寂が広がる。