黒峰くん、独占禁止。

 がさがさ。

 近くの木の陰から、誰か人の声がする。

 でもよく聞こえなかったから気にしないで良いだろうと、意識を離した……ら。

「っ……!?」

 声が出ない、足が動かない。

 自分の体が自分じゃないみたいにガチガチに縛られ、気を抜けばへたり込んでしまいそうだった。

 ……黒峰君、と。

「ありがとう、夜風。」

 あの、モデルさん……だ。

 私が見てしまったもの、それは。

 ――見たくもなかった、二人のキスだった。

 木陰に隠れるように、何回か唇を重ね合わせる二人。

 幸いにもこちらには気付かれず、はっと我に返ってから近くの物陰で様子を見ていた。

 ギリギリ声が聞こえる距離で、背けたいはずなのに聞いてしまう。

「やっぱり夜風は変わってないね、良かった。」

「……別に。」

「大好きだよ、夜風。」

 そしてモデルさんはもう一度、黒峰君の頬に唇を押し当てた。

 黒峰君の意思が伴っていないような、一方的なキス一つ。

 それだけで私の心には、一気にどろどろとした嫌な感情が流れ込んできた。