黒峰くん、独占禁止。

 ……――その途端。

 ポケットの中でスマホのバイブレーション音が聞こえた。

 一応スマホは消音モードにしておいたんだけど、バイブレーションはやっぱり気付く。

 だからとりあえずポケットから出してみると、久しぶりに見る名前があった。

 杏珠(あんず)……大事な妹の名前だった。

 これは出なきゃいけない。せっかく連絡をくれたのに、出ないなんて薄情な事できない。

 そう急いで、光莉ちゃんに理由を説明してから一旦店内を出る。

 そして近くのベンチに座ってから、深呼吸して応答した。

「……久しぶりだね、杏珠。」

《お、お姉ちゃん!? お姉ちゃんだよね!? ちゃんとお姉ちゃんだよね!?》

「お姉ちゃんだよ、ちゃんとお姉ちゃん。杏珠のお姉ちゃんの、桃香だよ。」

《うぅっ……ごめんね、連絡できなくって。受験勉強とか、塾とかでいっぱいいっぱいで……》

「泣かないでってば。でも勉強も順調なんだね、良かったよ。」

 久しぶりに元気そうな妹の声が聞けて、知らず知らずの内に口角が緩む。