黒峰くん、独占禁止。

「え!? 桃香ちゃんどうしたの!? もしかして走ってきた!?」

「う、うん……遅れると思って、無我夢中で……。」

 肩でぜーぜー息をしつつ、口角だけが上がった不自然すぎるだろう笑みを浮かべる。

 光莉ちゃんはそんな私を心配そうにしながら、持っていたらしいハンディファンを貸してくれた。

「な、何から何まですみません……。」

「いいよ、気にしないでっ。……でも、びっくりしちゃったよ。桃香ちゃんが時間ギリギリに来るなんて珍しいね?」

 何かあったの?と言いたげな光莉ちゃんの表情と視線がぶつかり、うっと言葉に詰まる。

 ……言えないよね。人に、しかもモデルさんにぶつかって遅くなっただなんて。

 そう思った私はあははと苦い笑いを作り、曖昧に言葉を濁した。

「ちょ、ちょっといろいろあって……それで、いろいろしてたら遅くなっちゃってたって、感じ、です。」

 さ、流石にアバウトすぎかな……。

 言った後で不安に包まれ、ちらちらと光莉ちゃんの顔色を窺う。

 でもどうやら疑ってはいなさそうで、笑顔で「そっか! そういう日もあるもんね!」と優しい返答をしてくれた。