黒峰くん、独占禁止。

 心の中で深い土下座をして、慌てて麦わら帽子を手渡す。

「あの、本当に怪我してないですか……!? 治療費払いますので!」

「ううん、大丈夫です。心配してくださってありがとうございます。」

 勢いよく自分の気持ちを伝えるも、彼女はふわりと微笑んで麦わら帽子を被った。

 ……やっぱり、モデルさんだ。

 些細な動作一つで絵になっていて、ほうっと見惚れてしまう。

 長い黒髪が揺れ、太陽光で反射していて、彼女の周りだけ空気が違うようだった。

「では失礼します。」

 彼女は軽く会釈をして、何やら急いだ様子で横断歩道を渡っていった。

 あ……もしかして、急ぎの用事があったのかな……。

 そうだとしたら、物凄く申し訳ない。私のせいできっと時間を使わせてしまっただろうし……本当にごめんなさい!

 小さなかばんを持ち直し、彼女が渡った横断歩道を見つめる。

 だけども自分も大事な約束があったと思い出し、今度こそ待ち合わせ場所に向かった。

「……はぁ、はぁ……っ、ごめっ……光莉ちゃん……!」