黒峰くん、独占禁止。

 相手は……言わずもがな、嶺緒君。

 どうしてこのタイミングで……!?といった疑問を追いやり、苦笑いを浮かべる。

 ごめんね嶺緒君。私、少し考える時間が欲しいの。

 結論が出るまでは、関わらないでくれたら嬉しい。

 そう言えば絶対に深堀されるに違いないから、テキトーな事を言って通話を切ろうとする。

 付け加えるように「ごめんね。」と言い、一方的にやめようとした時だった。

《ふーん……嘘でしょ、それ。》

「……ち、違うよ。嘘じゃないよ。」

《いーや嘘だね。なんだか声がちょっと上ずってる気がする!》

「そう、かなぁ。」

 ば、バレてる……。

 それでも希望を見出してしらばっくれるけど、嶺緒君はもう完全に嘘だと思っているようで。

《ね? いいでしょ? ももちゃん、俺久しぶりにももちゃんとお泊りしたいな。》

「……でも――」

《ダメ? ……桃香。》

 2オクターブくらい低くなった声で、愛称じゃなく名前で呼ばれる。

 ここで名前で呼ぶなんて、ちょっと卑怯だ。

 この低い声で名前を呼ばれると、絶対的な“ナニカ”を感じる。