黒峰くん、独占禁止。

 そうすれば彼は渋々と言った様子で、ちゃんと分かってくれる。

 ……これも、完全に突き放せない原因だ。

「そういえば、さ。」

 私から離れた黒峰君は、どこから取り出したのか分からない棒付きキャンディーを咥えてそう呟いた。

「春宮は俺のこと、好き?」

「……それ聞いてどうするの。」

「別に? どーもしないけど。」

 まぁ、確かに聞いたところで黒峰君はどうもしないんだろう。

 なんとなく、そう分かる。

 黒峰君は嘘吐かないタイプだし、隠し事もできなさそうなタイプだから。

「んで、どうなの?」

「……どっちでもないよ。黒峰君のことは、ただの同級生だとしか思ってない。」

「それだけ?」

「うん、それだけ。」

「そのただの同級生が、ここまで執着してくるの気になんないか?」

「……黒峰君が何言いたいのか、さっぱりだよ私。」

 何がしたいんだろう、この人は。

 そりゃあ気になるし、私を好きでいる理由も分からないままだから教えてもらいたい。

 モテまくって女の子には困らなさそうなのに、どうして私みたいな平凡女子に突っかかってくるんだろうか……。