黒峰くん、独占禁止。

 とりあえずそう伝えようと、口を動かしかける。

「黒峰く――」

「……んん、やめろ、来んなよ……マフユ……。」

 ――ドクン、と心臓が嫌な音を立てた。

 黒峰君、今女の子の名前……言ったの?

 分からない。マフユって名前だけじゃ、どっちの性別かなんて分かりっこない。

 けれどどうしても、女の子の名前だと思わずにはいられなくって……どうしようもないくらい、自分でも制御できる気がしない黒い感情が芽生えた。

 ねぇ、マフユって誰……?

 一刻も早く尋ねたくて、でも答えを聞くのが怖くて躊躇ってしまう。

 寝言で呼ぶくらいの仲だから、マフユって人と結構仲良しなの?

 そんな疑問も、黒い感情が生まれた心の中に消えていく。

 一方黒峰君は私の気もいざ知らず、まだまだ気持ちよさそうに寝息を立てていた。

 すー、すー……と規則正しい音が耳に届く。

 ……黒峰君が、恨めしい。

 そう思ったが最後、私は些細な反撃の為に黒峰君の顔に手を伸ばした。

「黒峰君……食らえ!」

 そして、両手で黒峰君の顔をむにむにし始めた。