黒峰くん、独占禁止。

「俺が春宮のこと独占すんの?」

「……うん。」

 こんな風に、すぐに抱き着いてくるの……たぶん、良くないから。

 私たちは付き合っていない。勝手に、黒峰君が強引に来てるだけ。

 でもきっと、黒峰君は付き合っていようがいまいが気にしていないんだろうなぁ……。

 最初こそは甘えたさんなのかと思っていたけど、日に日に抱きしめる力が強くなっていく彼に、そうは思えなくなっていった。

 何で?やどうして?と問いかけても、答えは『春宮が好きだから。』の一点張りで。

 私は黒峰君を拒否しているのに、こうもグイグイ来るものだから。

「……その代わり、あと10秒だけだよ。」

「ん。」

 なんて、ついつい甘やかしてしまっている。

 こんな様子を見るに、非は黒峰君だけじゃなく私にもあるわけだ。

 中途半端に拒否して、結局強く突き放せはしない。

 そんな弱さが、黒峰君を甘やかしてしまっている。

「はい、10秒経ったよ。」

「あと10秒追加。」

「ダメ。早く離れてほしいです。」

 ぐっと彼の胸板を押して、これ以上はダメだという気持ちを見せる。