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 夜がこんなにも楽しいと思えたのは、初めてだった。

 お酒が心地よく体に浸透し、後先のとこなんて何も考えられなくなって、ただ激しく求められる快楽だけに浸る。

 「ねぇ、もう……無理ですっ」

 「ふっ、無理?キミから誘ってきておいて?」


 もう、何も考えていたくなかった。

 もうすぐ一年記念日を迎えるはずだった彼氏が、友人と浮気していたことも。

 秘書としてお仕えしている部長の機嫌が悪く、度重なるパワハラにずっと悩まされていることも。


 これまでの二十七年という人生の中で、お酒の失敗も、異性との一夜限りの関係も、どれも私には皆無だった。

 友人達の“そういう失敗談”を聞くだけで顔を赤くしていた私が、まさか、当事者になってしまうなんて。



 「日本に帰国したその日に、キミのような女性に掴まってしまうとは」

 「……んっ」

 「そういえば、何か相当なストレスが溜まっていると言っていたね。なら一緒に、解消していこうか」

 「待って、ください……っ!」

 「もう、待てない」