翌朝。朝食を食べて畑から戻ると、玄関のドアをコンコンとノックする音が聞こえてくる。 

「ナターシャ、リーク。おはよう」  
「おはよう。良く眠れたかの?」

 マッシュとメイルの夫妻だった。リークがドアを開き私と共に挨拶をする。

「おはようございます」
「うちの家に来ない?お茶しましょう」

 メイルからの誘いを受け、隣にある2人の家にお邪魔する事になった。

「お邪魔します」
「さあ、入って。お茶をいれるわ」

 リビングの食卓テーブルの真ん中には、白い花瓶とピンク色の花が飾られている。
 その花からは、豊潤な香りが出ている。

「はい、どうぞ」

 白いティーカップに入ったお茶はぱっと見、普通の紅茶に見える。メイルに促されて飲んでみると、紅茶の風味に少しパチっとした感触が舌で感じる。

「薬草を入れてみたの。疲労回復の効果があるわ」
「ありがとうございます…!」
「いえいえ」

 マッシュとリークも、気分よく紅茶を飲んでいる。するとドアを叩く音がした。

「はーい」

 メイルが出迎えに行く。私はその場から動かず聞き耳を立てていると、ケインの明るい声が聞こえてきた。

「みんなおはよう!良く眠れたかい?」

 メイルに連れられ、ケインがリビングにやって来た。

「おお、ケインかい。良く寝れたわい」
「そりゃあ良かった。リークもナターシャも、良く寝れたかい?」
「ああ」
「寝れたわ」

 ケインは腕を組みながら、うんうんと頷く。

「実は、みんなに話したい事があってな」
「話とはなんじゃ?」
「結論から言うと、漁やってみないか?」
「漁?!」

 いきなりの誘いに、私達は思わず大きな声を出す。

「漁だよ漁。釣りも勿論教えるぜ。なんならうちで漁師として働く…ってのもできらあ」
「本当なの?おえらいさんは知っているの?」

 メイルからの問いに、ケインは勿論だ。と返す。
 確かに魅力的な話だ。それにリークやマッシュからすれば漁師になれるとあれば金銭面からしても魅力的な話かもしれない。

「漁にも色々あるんだ。船に乗って網で魚を取る漁もありゃあ、貝なんかを取る素潜り漁もある。それにザナドゥには素潜り漁やってる海女もいる」
「へえ…」
「アンタらどうだ?やってみないかい?」

 私はリークを見た。リークは十秒程考え込むと、やってみたいと告げた。
 マッシュも賛成の意思を見せる。

「じゃあ、決まりだな。メイルとナターシャも来るかい?」
「ええ、私もいくわ。ナターシャは?」
「私も行きます」

 こうして、私達の漁の参加が決まった。決まった事で、早速私達は漁港へ赴き、船に乗る。

「それにしても、ケインは優しいのう、我々のような狼男まで…」
「ははっ、ザナドゥの町長は狼男だからな。ザナドゥの民はそんな迫害なんて真似はしねぇよ」
「そうか…」

 マッシュはこの後も漁の最中も感慨深そうに、ケインを見つめていたのだった。
 こうして漁の結果は漁は大成功だった。リークがサメを吊り上げたのには驚いたが。

(この暮らしも、良いかもしれない)

 海風を受けながら、穏やかに暮らす。このまま、平穏に暮らしたいものだ。