「これ、どうやってここまで柔らかくしたんですか?」

 私はつい、料理長にそう尋ねてみた。

「ヨーグルトと牛乳に漬け込んでから焼いてみました。どうぞ食べてみてください」

 料理長からの言葉を受けた私は、お肉をフォークとナイフで一口サイズに切ってから、口に運ぶ。

(やわらかい…そして臭みも無い!)

 驚く事に、肉には臭みも無く、やわらかでマイルドな食感とステーキソースの味わいが口いっぱいに広がっていった。

「すごいっ美味しいわ!」

 ナジャも声を上げて、美味しさを爆発させる。

(パンと一緒に食べたいかも)

 私はふいに出て来た欲求に従って、料理長にパンは無いかと尋ねてみる。するとコックが手早く籠に入った丸いパンを用意してくれた。

「私も頂戴!」

 私だけでなくナジャもパンを貰う。更にはリークもパンを貰ったのだった。パンと鹿肉のステーキの親和性が思ったよりも高く、むしゃむしゃと食べれてしまう。

(これでサンドイッチ作ったら美味しそう)

 こうしてランチを食べ過ぎてしまった私は、その後自室で休憩したのだった。

「食べ過ぎた…」

 お腹の上の方が張って苦しかったが、時間が経つと消化も進み楽になった。あまり食べ過ぎるとお腹を壊しかねないので程ほどにしないといけない。
 それにしても部屋は広い。本当にリークの家とは比べ物にならないのが見て取れる。

(貴族の別荘だからな…)

 すると部屋の扉を軽くノックする音が聞こえてくる。はーいと言うと入ってきたのはナジャとメイルだった。

「ナターシャ、お時間良い?」

 ナジャにそう尋ねられ、私は勿論大丈夫と答える。

「じゃあ、おじゃましまーすっと。ドア閉めるね」

 ナジャがガシャンとドアを閉めた。

「じゃあ、結論から言うと今後について話しときたいなって」