廊下を走っちゃいけない決まりがあるのは知ってるけど、私はあわてて氷高くんの後を追い駆けた。


「あのっ。持ってるノート、全部私に返してください!」

「なんで?」

「なんでって……、初対面の人に仕事を手伝ってもらうのは悪いというか……」


もっと言えば、モテモテイケメンの氷高くんに、冴えない地味子の私の半分以上のノートを運んでもらうなんて、恐れ多いにもほどがあるというか……。


「遠慮すんなよ。及川、俺が声かける前、重たそうにノート持ってたじゃん」

「は、はい……」

「敬語もいいって。一緒に運ぼう」


氷高くんはそう言うと、軽々とノートを持ち上げて、ふっと微笑んだ。

いらずらっ子みたいに得意げだけど、あたたかくて優しい笑顔に、私の心臓がドキッと跳ねる。


「あ、ありがとう……」


氷高くんって名前の通り、氷のようにクールなイメージがあったけど。


本当は周りのことをよく見ていてすぐ気が付く、親切で優しい人なんだな……。