そしていざ洞窟に入るという時になって、インストラクターは言った。


「皆さん、トイレは大丈夫ですね。中に入ると3時間は出られませんし、もちろん洞窟ですからトイレはありませんよ。」


――えっ。

 実は少しトイレに行きたかった。
 しかし、それを言おうとした瞬間、一同はもう中に入り始めていた。


「あ……。」

 トイレに行かせてほしいと。その言葉は、喉まで出かかった。


 しかし言えなかった。タイミングを逃した。
 今さら皆の――しかもほとんどは若い女性の――動きを止め、中に入った人を引き返させてまで、「トイレに行かせて欲しい」とは言えなかった。


――3時間くらいなら、何とかなるか。


 私は男らしく腹を括った。