三杉は、たいして練習もしていないクセに、全く、まごつくことがない。
 見せ方を知っているダンスで、悔しいことに、客観的に見ればカッコいいだろう。

 そんなことをボーッと考えながら踊っている最中。
 私は、突然の出来事に息を止めた。


―――!!


 私が倒れそうになるフリの箇所、当然、一人で踏ん張るつもりでいたのに。
 三杉が、私を抱き止めて、支えてくれたのだ。


――はあ!?

 
 たしかに、そういう振り付けなのだけど、そうなんだけど。これまで、一度もやらなかったクセに?

 要するに、私は――、むちゃくちゃ、ドキドキしてしまったのだ。

 悔しい。不意打ちすぎる。恥ずかしい。でも、文句を言うのが筋違いだとは分かっている。


――無表情で良かった。


 私は転生して初めて、感情が表情に出ないことを感謝した。

 動揺して体温が高くなったことに、三杉が気付いてないことを祈りたい。