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 どこから、話を聞きつけたのだろう。

 あの、変態政治家が、何のアポもなく突然、家までやってきた。私が何かやらかしたという情報を得て、心配して来たということだ。

 ゲームのルート中には、断罪されて家ごと没落した百佳が、この男と結婚させられるというエンドがあったけど。あれが、現実になりつつあるのだろうか。


――とりあえず。
 この日は、約束のない方の取り次ぎはできないと、春名さん達に追い返してもらった。


「いかにも親切そうに、傷物の娘を貰ってやろうという感じのことを言ってました。失礼にも程があります。」

「お嬢様を慰めたいとか。恐怖でしかないですよね、通報しましょうか。」

「今度は、ご両親がいるときに来ると言っていました。思わず『結構です』と言いそうになりましたよ……。」
 

 春名さんと使用人の皆は、変態政治家が帰った後の玄関に、塩を撒いていた。
 私より怒ってくれている――その剣幕に、私は少しだけ、救われた思いだった。