「おい、やめろ。」

 三杉が、乱暴に、佐々木くんを引私から引き離した。

 佐々木くんの発言は、三杉にも聞こえたはずだけど、特にビックリはしていない様子。

――三杉は、佐々木くんの杵築への思いを、知っているということ?

 三杉の認識を探るべく、じーっと顔を見上げた私に、三杉は少し、たじろいだ様子を見せた。
 

「……なんだよ?」

「三杉は、どう思ってるのかなって、思って。」
「それを、今ここで聞くか!?」

 そりゃあ、俺だって……、と言いかけた三杉の言葉を遮るように。「お待たせしました!! さあ行きましょう!」と、羽村が割って入ってきた。


 私たち一行が、昇降口の先の、高等科の事務局受付前を通りかかったとき。事務局の人から、「黒瀬さん。」と呼び止められた。

「先に行ってて下さい。」
「おー。」
「はい。」

 私は三人に先に行ってもらって、事務局の人に用件を聞いた。

「私もよく分からないんですけどね。黒瀬さんが来られたら、中で待ってもらうようにと、言われています。」

 事務室の中の椅子に座った私は、スマホを開いた。
 少し時間がかかるかもしれないので、ちょっと遅れるかもしれないと、連絡しておこう。