――なんてことだ。


 状況が読めないけれど、今のはたぶん、ヒロインを手で示す場面。女って聞こえた気がするから、佐々木くんのことではないだろう。

 杵築は、白鴎さんの方だけを見据えているから、後方にいる愛花ちゃんと私の立ち位置を、はかり間違ったのだ。

 よく見ろ、愛花ちゃんは、私のちょっと左だよ!


「あの、ちょっと間違……。」
「ふざけるな!!」

 杵築の凡ミスを教えてあげようとする、私の言葉を遮って。
 白鴎さんは、杵築を睨めつけた。


「親族の賛同が得られないのであれば、意味はない。まさか、一人で生きているつもりではあるまいな?」
「……!」

 目の前にいる杵築の肩が、かすかに、震えたのが分かった。


 ゲームの中だとすれば、いかにもクライマックスという風情のこの場面。しかし、せっかくのそれも、ヒロインを誤解されたままでは、ただのコントになってしまう。